話題別参照リンク: あゆ 名雪 舞 真琴 栞 全体感想 特典版サントラ 栞不満点 栞不満点への意見に返答
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このページは、私のプレイ経験に基づき、Kanonのシナリオについての分析・解析・邪推その他もろもろを行った結果報告のページである。
ただし、プレイを進行させながら、感想を持った段階で随時コンテンツ追加という形をとるので、日付、状況等にはご注意。(「まだ見てない情報」を残した段階で書いているので)
それから、辛辣な意見が多いことについてのフォロー。私のふりーとーくを恒常的に読んでくださってる方ならわかるかもしれないけど、私には「気に入ったものほど辛辣なことを言う」傾向がある。けなしようもない作品(F-ZERO Xとか風のクロノアとか)は褒めっぱなしだけど、基本的に辛辣なことを言うのは愛あってのことと好意的に解釈していただければ幸いである。
ということで、最初の感想&分析。
五人いるメインヒロインのうち、二人についてクリア。で、この段階でOneに比べると、シナリオの統一感というか、全体の統合感が低い感を受ける。Oneのときは基本的に大きな幹の分岐だったのに対し、Kanonは複数本の木という構造だと感じる。
Keyブランドが追求するという、「一つのテーマについて複数の物語によって語る」というスタイルについては、確かにその通りだと実感する。基本的には(これまでクリアした)二つのシナリオはいずれも同じテーマの違うお話だ。ただ、複数本の物語の切り離され具合がちょっと大きくないかな、というのが正直なところである。
あとは、伏線の張り方が結構アレ。伏線の張り方自体はオーソドックスだし、きちんと解決もさせてると思うのだけど、伏線も張らんでおいて突然ヒロインが実は○○○だとか○○○○だとかいうのはやめて欲しかったです。いやマジで。
それぞれのシナリオを一人立ちさせるために、各シナリオのソースが膨らみすぎちゃって、情報量過多な状態のまま書かれたって感じ。各シナリオへ分岐するための序盤・どのシナリオが選択されたか理解させかつ伏線張りのための中盤・中盤まででフォロー仕切れなかった情報を一気に吐き出すための大解説大会と化す終盤――といった感じ。
ただ、分岐シナリオ単体でなく、全体を終えてから考え直すと別の印象があるのかもしれませんが、今の段階としては、シナリオ最後の強引な展開はちょっと辟易しました。たまたま一・二番に強引な話引いたという可能性は否定できませんが。
プレイ状況変わらず。っていうかプレイしてねー。オープニングと箱と何故か手元にあったチラシを見て、あゆの特別扱いっぷりを確認したぐらい。ひょっとして、あゆシナリオが中核なのかな、と考えた次第。だとすると舞シナリオの解離ぐあいはかなり問題な気が(^^;
*真琴シナリオ(1回目)。情報量の提示具合がいい感じ。エピローグの終わらせ方もばっちりです。ファンタジーが極端に強いせいか、書き手と物語の離れ具合が良かったという印象。というか、あゆシナリオが移入しすぎなんですよね、多分。
あゆシナリオは、情報量が過多な上に、全部答えを出しちゃってるから。しかも、エピローグ邪魔だし。余韻の部分であれだけ語ったら負けでしょう。作者が物語り引きずってるのがバレバレになります。
もっとも、あゆシナリオは前回書いたほど情報提示が酷いわけじゃないようです。(真琴シナリオをプレイしながら)読み直すと、それなりに書いてある感じ。なのに足りないと感じたのは、やっぱり後半の情報量過多のせいでしょう。っていうか、オープニングでの扱いとか、序盤からの情報出しまくり構成とか、特別扱いしすぎです。キモチが先走っちゃってて、技術で抑えるべきところを抑えてないような。そのぶん、直撃した人には大ヒットすると思いますが。
対して、真琴シナリオは語らなさ具合が絶妙です。というか、語りすぎた分を秋子と天野の二人ですっかり吸収したって感じかも。舞シナリオの佐祐理もよかったですが、ここでの秋子&天野は素晴らしいの一言です。でも、最後に名雪がおいしいとこさらおうとするのはいただけません。あれやるんなら、事前にもうちょっと絡ませておかないと。猫が関わるとキャラ変わっちゃうから、絡ませられないんですけどね。
真琴シナリオ(1回目)の後、ひょっとするとと考えたこと:ひょっとすると全体の真のヒロインは秋子さんなのでわ(笑)
真琴シナリオについてのまとめを別ページにて追記(8.2)#名雪シナリオ(1回目)。そうかそうか、あゆシナリオはここのための犠牲となったのか、という印象。
単体でみた場合、秋子さんの演出がイマイチですな。もっともっと印象づけとかないと。このシナリオは秋子さんの印象度が全てですから。それと、些末なとこなんですけど、「お赤飯」云々は、やっちゃった後の方がグーだった気がします。ベタ過ぎるのが難点だけど。
情報量は少なめ。つーか、某シナリオがないと話の根本すらわかりゃしません。むしろ、某シナリオの裏シナリオという認識が正しいかも。同じひとつの事件の解決として、某シナリオでは再会で、名雪シナリオでは別離で決着するっていう。 ただ、(名雪シナリオでは)結局主人公は肝心な事件のこと思い出してないんですよね。そこんとこ、サブシナリオでフォローしてんのかな? してなさそう。誰もフォローできないしさ。
なお、裏云々という断定については、「ボク」って一人称使うのが全シナリオ中で一人だけという前提の下の話です。 これが誤認だったりすると、「裏」などという断定は無意味になりかねませんので。 ちうことで指摘があればメールよろしく。
あと印象に残ったのは、時計の扱いですかね。二重三重に役に立つスーパーアイテムです。あれは素直に上手いと思いました。特に最後のあたり。
そうそう、名雪シナリオのEND後、問題の事件を思い出して涙するのを慰める、って話で一本書けるななどと二次創作に想いを馳せてみたり。誰か書きません? 別段ネタ代とかは要求しないから。
これまでの4つのシナリオで共通して感じるのは、サブキャラの扱いの弱さですかね。佐祐理は非常にGoodだったのですが。つーか、どのシナリオも名雪をもちょっとうまく扱おうよ、という気がします。ここで名雪が絡んでおけばとか、そういう部分が多いです。
あとは、舞シナリオの特異性が気になります。キャラが完全に独立しちゃってるんですよね。なんか「One」の続編やってる気分になります。誰かの趣味で強引にねじ込んだ話なのかなぁ。
佐祐理サブシナリオもクリアしました。他にサブシナリオあるかの確認&二回目ぐらいまではやろうかというのが今の考えです。
さて、残るは栞シナリオのみ。クリアしたらあっちこっちに発生してるファンページにもコンタクトしてみよっと。
#栞シナリオ。尺の配分にちょっと難があるでしょうか。「好きになっちゃいけない」をもっと演出してくれたらな、と思いました。「嫌いです」とかの細かいネタがよかったぶん、残念。
というか、情報量過多でしょう。「栞と主人公」の話だけならまだしも、「香里と栞」の話もいっぺんにやろうとしてるので。
その多い情報量をなんとかまとめようとしてるのが名雪です。使い方、非常にGoodでした。「これが真の名雪シナリオじゃないんですか」と思っちゃったぐらいです。名雪シナリオよりよっぽど名雪が立っているのはどうかと思うぐらい(笑)
あゆの扱いも名脇役って感じ。ただし、名雪の名脇役っぷりには勝ってないと思います。
対して裏ヒロインとでもいうべき香里はダメダメ。もうちょっと立ててやらなきゃダメ。つーか、名雪に完全に喰われてます。
残念なのは、エピローグ。あゆへの思い入れに喰われまくりです。「誰かの夢」云々まではいいんですが、あゆのこと思い出すのは語りすぎでせう。
香里ダメダメ、エピローグ、については、#栞シナリオに足りないものにて補足(7.4)以下暴言。栞シナリオについての極論。「MOONとOneのストーリーダイジェストですか?」
っていうか、栞シナリオってMOONとOneのテーマのほとんど全て含んでるんですけど。そりゃあ情報量多すぎますがな。セルフパロディ的なテキストが多かったのが、象徴的です。
一通りシナリオをクリアしたんですけど、白眉は真琴シナリオかな、と思います。話の持っていき方、情報量の提示具合、淡泊だけど想像をかきたてるエピローグ、どれもバッチリはまってます。
他のシナリオは、情報量過多というか、MOONやOneで語ったテーマの語り直しを意識しすぎて、失敗してしまってるかなという印象です。
名雪─栞─あゆの3シナリオは、相互補完的な色が強い――というのはいいんですが、しわ寄せがあゆシナリオに行ってしまってます。
あゆシナリオは、クリア順序によって感想がガラっと変わるんじゃないかな。あゆシナリオには侵入条件を課しておいても良かったんじゃないでしょうか。痕みたいに。
総合点数は、88/100ってとこでしょうか。MOONやOneのスタッフが作ったんでなければ十二分に合格点だとは思います。ま、いいもの作っちゃった人への厳しい目ということで。
うやむやになってるあゆシナリオと舞シナリオについて、改めて。
#あゆシナリオ。尺が足りてません。名雪シナリオと栞シナリオのしわ寄せがモロに響いてる感じ。あんだけ序盤からバンバン情報提示してるくせに、最後に大説明モードに入るのは、配分ミスかなぁ、と。
たとえばカチューシャの話はもうちょっと早い段階で提示しておいて、もう1度繰り返した方がもの悲しい印象が強くなると思うし。他にもふたりだけの学校の話とか、昔あった木が切られた話とか、提示順を見直せば早い段階に持ってこれた話もありそうだし。 要するに「学校が実は存在しなかった」ってネタを引っ張りすぎたために全部の説明が後回しになっちゃってて、終盤の情報過多につながってるかと思います。
あとは、伏線というか設定自体の多さも問題。 待ち合わせ場所は駅前と学校の二ヶ所、 プレゼントも人形とカチューシャの二つと、 重複した設定もあったりします。 当然情報量自体も多くなる。 名雪―あゆ―栞というシナリオ群の根幹を成す最重要シナリオだというのはわかりますが、 もうちょっとシェイプアップしたほうがよかったのではないでしょうか。
ちょっと禁断の言葉気味になりますが、 シナリオライターが(シナリオに対して)冷静な目を向けられなかったために、 きちんと構造分析すべき部分に手が入ってないんじゃないかと思います。 (このへんについては、 モノを作るための二つの意識 にてちょっとだけ補足)
#舞シナリオ。男の子が騎士になりたいと思う話。それ自体は、物語としては魅力的です。 しかし、情報の提示方法には難あり。 確かに「主人公が関わりだしてから事態が急展開を始めた」という情報提示はあるのですが、最後の最後まで「実は知っていた」ことが示されてないのがどうにも……。 もうちょっと伏線がほしかったです(2回目やると感想変わるかもしれませんが)。
また、作品世界の他の部分との乖離が大きいのもよろしくないです。別のゲームやってるんじゃないかという錯覚すら感じます。他のシナリオに舞についての補足を入れ込むなり、舞シナリオにせめて名雪あたりを絡ませて作品世界との乖離を阻止すべきだったでしょう。
ところで舞って、ヒロインとしての意味はあゆと一緒なんですよね。
しかし、あゆについては前述の通りの特別扱いぶり。オープニングの歌やら「夢」についての語りやらで繰り返し情報が提示されるのですが、舞ではそれがありません。その上、舞の場合は他のシナリオによる補足がほとんどないから、全部単体シナリオの内部で説明しないとならなくなります。 その上、序盤どうしても入ってくるあゆについてのフラッシュバック等が邪魔になります。必ずあゆのことを回想してしまうため、舞については時間を割けないんですよね。 登場するタイミングも全ヒロイン中一番遅いし。
名脇役(佐祐理)がずいぶん手助けはしています。しかし、それでも終盤の謎解きが唐突な印象です。舞踏会の前あたりで、回想のとっかかりを入れとくべきだったでしょう。昔このへんで遊んだって記憶を出させて、名雪あたりに増築の話をさせて。それもまるで名雪シナリオに関わってる情報みたいなフリをさせて。そうすれば名雪が関わるきっかけにもなるし。
機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)の「時を越える魔法」はネタとしては好き。ただし、作品中ここだけで使われているネタなので、作品世界から浮いてしまってます。私の初クリアは舞シナリオだったのですが、「このゲームは時の魔法のお話なのかな?」と勘違いしてしまいました。
#初回特典版サウンドトラックについて。BGMとしてはいい曲が多いのですが、「聞き込む曲」としてのはちょっと不満。ほぼ全ての曲が2コーラス繰り返しなんですけど、2コーラス目でもっと大胆に変化していいかなという感想。アルバムだけ聞いてゲームやらない人も少ないだろうし、それなら各曲の主題は否が応でも憶えてるはずだから、もっと変奏させちゃっても、って。ま、形式としてのKanonにこだわってる、という見方もありますが。
と、これだとなんか咎めてるみたいな言い方ですが、これは「せっかく面白い初回特典でチャンスもできたことだし、もっとイマジネーション広げた創作を見せてほしかった」という希望ですね(笑) 面白そうじゃないですか、一本のゲームを下地にして、そこから音楽担当とか文芸担当とか美術担当とかがより外側へ向かった創作を行うって。 某角川マルチメディア展開とかが、一つの作品から内向きへ落ち込んでいくのとは、全く別のメディアミックスができるかもしれませんぜ。
ということで、構造解析やらなんやらの思案中なんですが、いろいろ思案してたらなんか総合評価がみるみる下がっていきやがります(笑) 現在のところ78/100点ぐらい。今が底近くで、この後どんなに下がっても73点ぐらいで下げ止まると思うのですが。最高点が風のクロノアの91点というところで、痕で83点ぐらい、YU-NO(現世編のみ)で84点という非常に厳しい評価なので、78点ってのは非常に優秀な評価だとは思いますが。やっぱ時間おいて冷静になるといろいろ見えてくるな、と再認識。
えー、Keyのネタバレ掲示板なんぞの議論に参加してたりするのですが、その過程で思いついた自論などの簡潔な再構成なども掲載していこうと思い立ってみたり。
演出に難があるのは、情報量過多とかではなく、伝えるべき情報の見極めを誤ったせいではないかと着想。
具体的には「栞に対してなにもしてあげられない」「栞に対し奇跡が起こって欲しい」という挫折感の演出がほとんど行なわれていないのではないかと考える。
そもそも栞シナリオには、「運命を否定する姉」と「運命を受諾する妹」に対し、主人公が仲立ちとなって姉妹の関係を回復させる、という構図がある。
しかし、「運命否定=香里」「運命肯定=栞」という状況に対し、
仲立ちとして登場した主人公が(運命肯定側である)栞側に立ってしまったため、
香里が(主人公とともに)栞に歩み寄り、
「運命を受諾・肯定する」という形でその心理的決着をつけてしまっている。
これは、そのまま栞が死ぬのであれば相応しい演出なのだが、最終的に栞が生き残る場合は、むしろプレイヤーから挫折感を拭い去るというマイナスの作用を及ぼしてしまう。
これを増長させるのが「期限を過ぎたらもう会わない」という約束。しかも主人公がこれを受け入れ、実際に別れてしまうのでもう最悪。
そんなことをすれば栞が生き残ったとしても奇跡が軽薄に見えるのは必然。おまけにとってつけたように奇跡のタネ明かしをされれば、構造的にモノを見る人間ならブチ切れます、そりゃあもう。
むしろ香里こそ主役のような扱いで動かし、栞を香里に歩み寄らせるような話にした方が良かったのではないかと思う。
もう一つの解決法はプレイヤーに問答無用で「栞萌え!」な状態になって貰うことだが、しかしそうするための部分部分での演出は既に一級品。それよりは、まだまだ欠陥のある物語構造を見直す方が楽かと思う
「栞シナリオの不満点」について。
「運命否定=香里」、「運命肯定=栞」とありましたが、香里が否定しているのは「運命を肯定している栞」なのではないでしょうか?
もし「運命を否定」しているのなら、栞の存在を無視することはないと思うのですが……。
ご指摘の通りです。むしろ香里は栞の運命についてよく理解していて、その上で「栞が死んで悲しむより、妹なんか最初からいなかったと思った方がいい」と考えているのだと思います。
ですので、「運命否定」は語としては正しくありません。にも関わらず「運命否定」と記述したのは、物語構造としての対比状況を説明するためです。語としては「運命拒絶」あたりの方がふさわしいです。しかし、「肯定」と「否定」という対称語のインパクトの強さは、説明に持ち込むにはうってつけなんですよね(^^;
ということで、「運命否定→運命拒絶」「運命肯定→運命受諾」あたりに読み替えてみてください。ご不満なようでしたら、再度ツッコミお願いしますです、はい。
今後書けそうなテーマについて。半ば備忘録。要望のメール等あれば優先して書きます。
「痕・Oneとの構造比較」については執筆途中の分岐型アドベンチャーゲームにおけるシナリオ構造の比較から発展的に補足するかも。
7.16追加:掲示板を立てるかどうかという懸案も一応あったりします。
いや、モノは作ってはみたんですけどね。
しかし、(私は)建設的な意見交換には掲示板は不向きと思っております。そんなわけで、意見交換やら反論やらはWeb公開文書もしくはツッコミ用フォームにてを希望する次第です。
私がツッコミを黙殺する恐れ? ありえませんな。そんなことするようなら禁断の言葉なんて作りませんってば(^^;
んー、公開性を向上させるために、送信されたメールを公開情報にするって手もありますが、それって掲示板って言うのか(笑)
ちなみに2次創作についてはエヴァその他のときに報われないのを悟りました。基本的に評論めいた活動を続ける予定……なんだけど、DNMLダウンロードとかで心揺いだりもしてたり(^^;
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