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静寂



 読後の余韻に浸っていたわたしの耳に、突如、数多の騒然が飛び込んできた。
 当然、わたしは自分の耳を疑った。何の物音もしていなかったのに。いや、そもそもそんな音などなく、未だこの場は静寂であるというのに。
 だが、聞き込めば聞き込むほど、それは静寂でありながら騒然にほかならず、むしろその鳴りは高まり、うねり、のたうちまわった。
 その、耐え切れぬほどの轟音に、しかしわたしはあっという間に聴きほれた。
  光も、音だった。
  触れる感じも、音で在った。
 ただ、私がそれらをすくい取ろうと、指先をほんのわずか動かした途端。
 重苦しい、ただの沈黙が戻ってきて、妙なる騒然はなくなった。
 私がため息をついても、もう、ただの息でしかなかった。