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憂鬱
全身を温もりが伝う。体の芯の冷たさをぬぐって、ほのかなほてりが肌にしみる。
しばらくそのまま楽しんでいたが、じきにその感触にも飽き、狭いバスルームを出た。
窓の外からは、あの憂鬱な音。私を冷やした張本人は、しばらく立ち去る気配もない。
ためいきをついてから、手早く服を着る。いくらかしめっている下着は不快だったが、上半身をくるんだ洗いざらしのシャツの方は心地よい。
ジーンズに足をつっこみながら、ふと、私はおもった。今、私を暖めてくれたものと窓の外の憂鬱なんて、温かいかそうでないかの違いしかないではないか、と。
深く考えれば考えるほど確かにそうで、私は思わず吹き出した。
「なに? どうしたの?」
部屋の主が、私の笑いを聞きつけ、扉越しに訊ねてきた。
窓の外では、憂鬱が軽快なステップに変わっていた。
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