He loves well

 ……彼?
 そうね。
 今までの誰とも、違う人。
 ――ん。たくさん、愛してくれるところかな。
 ちがう、ちがう。そうじゃないの。そゆのは、むしろ、下手。
 でも――いっぱい、いっぱい、愛してくれるの。なんていうのかな。上手くないんだけど、ね。でも、触られるたびに、愛されてるんだなって、思うの。
 優しいだけってのじゃ。ちゃんと、激しくもしてくれる。そうじゃなくって――ああ、わからないかな。だからね、そのね、えっと……
 だから、そゆんじゃ、ないの。
 あのね、気持ちいいじゃ、ないのよ。最初にね、彼の好きを感じて、だからわたしも好きって思って。好きだって思うと、熱くなるの。
 少し、ちがう。
 欲しいのはそうなんだけど、ちがうの。気持ちいいからじゃないの。好きだから、もっと好きになれそうだから、欲しいって、思うのよ。きゅーっとくるんじゃなくってね、じんわりと熱くなって。気持ちいいみたいにハジけないで、いくらでも熱くなるみたいな感じがして。
 馬鹿みたい?
 うん。わたしもそう思う。なんで、好きになったんだろって。
 でも、今ならわかるの。この人に愛してもらうために、好きになったんだろうなって。
 ヘン? 順番が、逆だって?
 そう、かもね。でも、そうなの。
 うん。
 欲しいよ。すぐにでも。
 そうかな? わからないかな?
 女の幸せ、とかじゃないよ。そんなわたし古くないって。
 ――ああ、きっとわかってもらえるのにな。あんなふうに愛してもらえたら。好きなだけで満足できるって、わたしも最初は信じられなかったけど。
 うん。
 しあわせ、よ。
 信じてもらえなくても、いいよ。たぶんわたしも、信じなかったと思うから。
 でも、今なら言えるの。わたし、彼に愛してもらえて、幸せなのって。
 たぶん、ずっとね。