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In 30 days ; Case3 : Misato & Ryoji


 泣いた。
 ただもうひたすらに泣いた。
 シンジくんは帰ってこないかもしれない。
 ただその事実がそこにあるだけで涙はとめどもなく溢れていた。
 ようやく見つけた安らぎ。ずっと欲しがっていた家族。
 温もり。
「……運が良ければ帰ってくるさ。信じて待つしかない」
 加持くんはそう言ってくれた。
 けれど、私には信じられなかった。
 別れの言葉もなくシンジくんは去って、
 後には何も出来ない私だけが残された。

 そんなふうに膝を抱えるミサトを癒す言葉を、加持は持たなかった。
 今必要なのは俺の与える温もりじゃない。
 シンジ君が――葛城が守るべき存在がそこにあると言う事実だけ。
 もし彼が戻らなかったら?
 自らを捕らえた彼女の檻を俺は壊せるのか?
 自信はなかった。
 与えれば与えた温もりの分だけ更なる温もりを求める彼女。
 その心の最初の隙間を埋めてやれる力を俺は持ち合わせていない。
 だから、今は包んでやるだけだ。
 彼女が膝を抱えて泣くあいだ、誰も彼女を傷つけに来ないように。

 家には帰りたくない。
 シンジくんの匂いがするから。
 シンジくんと一緒に過ごした時間が
  そこに留まっているような気がするから。
 シンジくんのこと、忘れたい。そうすれば苦しくない。
 シンジくんのこと、忘れたくない。大切な家族。
 わからない。
 泣こう。
 忘れられないのなら。
 泣いて気が紛れるのなら、
 この苦しみが和らぐのなら、
 全身の水気が抜けきってカラカラに乾くまで、
 泣こう。

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