Evangelionな小説のページへ戻る

In 30 days ; Case1 : Asuka


 今日も一人きりだった。
 毎日毎日コンビニで賈ってくる食品ばかりの生活。
 毎日家事をやっているシンジって、本当は凄いのかも知れないな。
 ときどき浮かんでくるそんな考えを力一杯否定する。
 ミサトは今日も帰って来ない。ここ一週間、いつもそうだ。そこまで
シンジのことが大切なんだろうか。
 誰もいない家。いつもは3人でいる家。いらないはずのシンジの温も
りさえ、いや、シンジの温もりが、懐かしい。
 ここ数日と同じように眠れぬ夜。
 ふと思いつき、立ち上がる。
 シンジの部屋の前に立つ。
 人の気配がしない部屋。いけないことだと思いつつ、戸を開ける。
 すべての荷物がまとめられた殺風景な部屋。人の住む気配のない部屋。
 出て行くつもりだったくせに、エヴァには乗らないって言ってたくせ
に、無理して、エヴァに乗ったんだ、アイツ。
 部屋を見回す。目だって置かれている、チェロのケース。
 もう一度、シンジの弾く音を聞いてみたいな。あたしだけに聞かせて
欲しいな。
 どうして、こんなに苦しいんだろう。
 そう言えば、シンジに会わなかった日って、ここに来てから、ほとん
どなかったな。そばにいることが当然で、そんなこと気にもしなかった。
 そう、シンジがここにいてくれないから、苦しいんだ。
 どうして、キスしたんだろう。
 暇だったから?好きだから?気まぐれ?
 わからない。
 加持さんのことは、素敵だなって思う。でも、シンジのことを思うと、
何故だか心臓が高鳴る。胸がきゅうっと締めつけられる。
 何気ない眼差しが、笑いかけてくれた顔が、忘れられない。
 どうしてこんなに沢山シンジのことを思い出せるの?
 戸惑いを覚えながら、胸に手を当てた。
 少しだけ、いつもより速い鼓動。
 眠れない夜。シンジのベッドに、横たわってみる。
 シンジの、匂いがして、何故だか、落ち着いた。


 気が付くと、朝だった。
 気持ちの良い目覚め。見なれない天井。
 ああ、シンジの部屋で眠ってしまったんだ。
 今日は、なんだか気分が良かった。ここ数日行ってなかった学校に、
久しぶりに行ってみたくなった。
 シャワールームに服を脱いで飛び込む。
 シャワーを浴びるのさえ、面倒くさかったこの数日。
 こんな事じゃ駄目ね。
 流水と一緒に滅入った気分を無理矢理押し流そうとした。
 こんな事ぐらいでくよくよしてちゃ、いいオンナにはなれない。
 すっきりした気分で、洗いざらした下着を選び、制服に袖を通す。
 久しぶりに朝御飯を食べ、鞄を手にした。
 いってきます。
 誰もいない、でも誰かいそうな部屋に向かってそう告げると、勢いよ
く部屋を飛び出した。


Evangelionな小説のページへ戻る