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< ゴールドベルグ変奏曲 | 予定 >
フランスの守備ブロックは固い。だが総じて年齢の高い選手で構成されるそのブロックは、スピードに対する対処に不安がある。
対するポルトガルの守備ブロックは粘り強い。強固さという点ではやや劣るが、相手に最後の仕事をさせないという意識は徹底している。おまけに攻撃の主軸・アンリに対してはオランダ戦でロッベンを抑え込んだ右SBミゲルが対することになる。
_そんなわけで双方決め手を欠いたままPK戦にと予想をした。しかし試合は、審判の果敢な笛により動いた。今日の主審はとにかく吹かない。流れの中での接触にはとにかく寛容に試合を流す。けれど基準以上に危険なプレーには必ずと言っていいほど笛を吹く。それがたとえペナルティエリアの中であっても。
お互いじっくりと攻め合いながら、やや流れはポルトガルにあるかと見えた前半30分過ぎ、ペナルティエリアの中でリカルド・カルバーリョがアンリに対しファール。厳しい笛だと思ったが、スローで見ると確かにアンリの足を蹴ってしまっている。勇気ある笛によりPK。GKリカルドにコースこそ読まれたものの、ジダンの勢いあるシュートには触れることもかなわず、フランス先制。
こうなればポルトガルの猛攻開始である。幸い準々決勝には欠けていたコスティーニャとデコがいる。コスティーニャのもたらす守備の安定をベースに、デコが気の利いたパス、周囲と明らかに違うテンポで試合を作る。要所要所でC・ロナウドがスピードを活かした攻撃を見せる。しかしフランスはそれらを凌ぎ切って前半終了。
_後半。ポルトガルは更にスピード勝負を仕掛けるためか、リスク覚悟でミゲルが上がりはじめた。上がった裏をアンリに突かれるシーンも出たが、得点の気配は匂い始めた。だがそれが、続かなかった。60分になろうかというころ、フランスのペナルティエリア付近でのトリッキーなドリブルを軸にした突破を仕掛けたミゲルが、足を滑らせたか負傷。一度はピッチに戻ったが、そのまま62分にパウロ・フェレイラと交代。守備こそ安定したが攻撃の駒は確実に消える。
ポルトガルと審判との相性が、このへんから目に見えるようになってきた。倒されるだけでは笛が吹かれない。焦って激しいタックルをすると、それには忠実に笛が吹かれる。それで更に焦る。ポルトガルがそんな悪循環に陥り始める。創造的だったポジション流動が消え、出来かけていた攻撃の形が失われていく。
フェリペ監督はイングランド戦でも見せた形――C・ロナウドとポスチガの2トップを繰り出して、なんとか攻撃に厚みを持たせようとするが、その狙いは機能しない。対してフランスは、もう慣れたものだとばかりにじっくり守る。見かけの内容ではポルトガルが攻め続けたが、ペースは完全にフランスのものだった。ロスタイム、ポルトガルは獲得したCKに対してGKリカルドまでもが前線に上がって勝負をかけたが、実らなかった。
たとえ一度でも落ち着く機会があれば、ポルトガルに勝負の機会はあったろう。しかしその機会は訪れなかった。主審とポルトガルの戦い、という側面が大きくなってしまったきらいはあるが、そのようなメンタル勝負もまたフットボールというものだろう。
_やや幸運にも思えるPKの得点を守りきって、フランス勝利。再びの栄光は、訪れるのか。