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強固な守備ブロックを誇るが得点力にやや不安を残すフランスと、逆に圧倒的な攻撃力を持つが守備ブロックにはやや劣るブラジルの対決。8年前の決勝と同カードでもあり、ブラジルにとっては今大会初の真の強豪との対決でもあった。
他に書く場所がないので先に書いておこう。ともすれば荒れるかもしれない試合をできるだけ平静に保とうとした審判の仕事ぶりはまるでお手本のようだった。名勝負は、すばらしい黒子なくしては生まれなかったと特に書いておきたい。
_さて、この試合、勝負を分けるのは攻撃の選手のクオリティではなく、その一段前――中盤の底でゲームを支える選手、フランスで言えばヴィエラやマケレレ、ブラジルで言えばゼ・ロベルトやジウベルト・シウバ、ジュニーニョ・ベルナンブカーノの出来にあるだろうと思っていた。
_手を打ったのはブラジルが先だった。今大会不調のアドリアーノの名前が先発に無く、代わってジュニーニョ・ベルナンブカーノの名が。ジダンやアンリではなく、やはりその一つ手前を抑えようという意図か。
そんな互いの意図を示すように、双方激しく攻めるも守備ブロックに阻まれシュートまで持ち込めない展開が続く。
そんな試合が遂に動いたのは57分、ジダンのFKからゴール前の攻防でフリーになったアンリが足で流し込んでの先制。アンリへのマーカー不在、完全なブラジルの守備のミス。
だがともかく点は入り、ブラジルは牙を剥いた。浮き足立つフランス守備陣。大虐殺が始まるのか、そんな気配があった。だがしかし、そんな中誰よりも冷静だったのは、既に選手としての峠を過ぎたはずのジダンだった。この期に及んでまだ進化するのか――そんなことを思う。冷静にボールを持って時間を作り、あるいは持てる選手にボールをさばくことで、ブラジルがやむなく帰陣しフランス守備陣が休むための時間を作り出す。それまで使いあぐねていたリベリーの使い方までも学び取り、それ以上に一人でゲームを支配した。
もちろんブラジルはそれでも攻める。次々に選手を入れ替えながら、DF陣で最も足の速いであろうロベルト・カルロス一人を残しての全員攻撃は、クレイジーそのものだった。だがジダンの力で冷静さを取り戻したフランス守備陣は、遂にブラジルに決定的な仕事をさせなかった。
_先制点は幸運で得たものだったが、そこから見せたジダンの支配力は圧巻だった。キャリア最後になるかもしれない試合になってようやく、ジダンはチームの真のキャプテンとして目覚めた。それは、デシャンの引退以降、数年にわたりこのチームが欲し続けていたものだ。本当に土壇場でジダンはその立場に収まり、もう2試合をキャリアに付け加える権利を獲得した。
――このまま優勝して引退するとなれば、きっとバロンドールすら獲得してしまうだろう。それはもう本当に勝ち逃げであり、伝説になる。仮にそうなるならば、この試合は伝説の始まり、転換点として記憶されることになるだろう。
そんな試合、溜息が出るほどに、堪能した。
Takashi : ペルナンブカーノと思われ.
white : thx。修正しました。