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SSのようでSSでないものの書き方。

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SSのようでSSでないものの書き方。

ふと思い立って豆満江開発機構発行のKanon月宮あゆSS本「ふたりの秘密 Utopianism2」に載せた「境界線」をなんとなく買っておいた大変お安いFlashPaperでOpenOffice.orgから適当に出力いたしました

去年の5/3のあゆけっと当日参加に合わせておよそ一週間前に企画が持ちあがりでっち上げたというどうかと思うシロモノですが、ついでにこいつの生成プロセスを書いておくことでなんとなくSSの書き方に反応しておこうかという次第。なお、ものの性質上、盛大にネタをバラしておりますのでくだらんものを読む気がある方は先に本編の方をお読みくださることを推奨いたします。

_1:アウトラインを考える

えー、ぶっちゃけこれを書いたときには大変時期が悪かった(去年の今ごろの記述参照のこと)ため、書く前から「あゆのストーリーのアンチテーゼ」という方向性だけがガッツリと固まりました。

で、アンチテーゼという方向に沿って、盛りこむべき要素を考えます。

「仕方ないからあゆは出す(*1)

「じゃあ病院で眠りっぱなしのあゆを登場させればOKだろう(*2)

「しかし眠っているあゆを出してしまうと本編キャラがまったく絡めないな」

「それは困るあゆが眠っているシーンだけでは話が成立しない」

「じゃあオリジナルキャラだ!(*3)

「病院だからとりあえず研修医。決定」

「しかし眠っているあゆと研修医だけだと世界がちっとも説明できませんよ?」

(ここで何か俺様脳内でわけわからんちんなスパーク発生)

「じゃああれだ、対抗して(何に?)祐一の生き霊だ!」

「研修医はきっと霊とか見えちゃうのだ。そして不幸にも祐一に巻き込まれる!」

「あとはあれだな、とりあえず病院だから盛り上げるためにERだ!(*4)

……とまあ、一応これで準備は出来たようです。

_2:なんとなく方針決定。

さて、今回は時間がない上にウザいしダルいので言葉づかいその他を合わせるための本編の確認とかチェックとかそういう面倒な過程は踏みません。というかそもそも本編キャラにまともに喋らせる気がありません(*5)

というわけで調べもせずにうりゃっと書き始めます。

_2.1:文章スタイル決定

とりあえずは筆致をどうするか決めます。研修医の一人称で重め、という方向で確定。Kanonらしからぬ視点を語り手である研修医に持たせることで、原作とは違う世界の見せ方をしよう、というもっともらしい意図を持ち出すとなんだかそれっぽいデスね!

_2.2:大雑把な構成

ERな展開ということは、病院に人が担ぎ込まれてこなければいけません。病院に担ぎ込まれそうなキャラを挙げて、それに絡んでくるキャラを考えて――となると、生き霊と現実の祐一が接触しうる箇所が出てきます。これ面白いので採用。

生き霊の少年が誰だかはその時点まで明らかにならないようにしましょう。

匂わせるような描写を重ねておいて、唐突にキーフレーズを持ち出すことで突然それらを本編とリンクさせる、というあたりを語り口の上での(小さな)カタルシスに据えることにします。

_3:じゃあ書くぜー!

ということでファイルを作ります。仮タイトル名でもありますね。やる気なく「研修医」とか付けて執筆開始。眠り姫の描写、研修医と少年の過去話、眠り姫の正体、年越しと彼女の声。キーフレーズとして「月宮あゆ」「心的外傷後ストレス障害に伴う心因性健忘」あたりを提示しつつ。これで原作との時間軸合わせも完了で、いよいよERな世界に突入です!

このへんから脳はいい感じでイってしまった状態に入ります。原作の要素をつまみ食いしまくりながら酷いことをひたすら書きます。基本的には原作の話の裏側をやるだけなので、いちいちストーリーを組み立てる必要もないですし。

その代わり情報の提示速度を意図的にアップさせます。要素を出しては解説だの語り手の心情だのを深く解説せずにガンガン進める、ことで読者に目眩を起こさせるべく。当然書いている方も酔っ払っているので、「ふざけるな」とか「諦めないのが仕事なんだ」とかいうフレーズがだくだくの脳汁とともに噴出しまくりです。――もちろん、いちいちあゆ&小祐一を否定することだけは忘れずに。

ラストはもやもやと想定していた通りに、唐突に場面を切っておしまい。

_4:本タイトル決め

一番重要です。

しかし一番やることはありません。ここまで書いていて綺麗にまとまっていれば、自然とタイトルは決まっているはずです。今回はすんなり「境界線」と出せました。

これがすっと出てこないときは、たぶん書く段階で何かが足りなかったのです。そういうときには読み返しては書き足すのを、なにかを掴めるまで繰り返します。

_5:補正

タイトルが決まったらそれに合わせて文章の細部を修正していきます。前半はじっくりゆっくり書いたので、あまり直すところもなく。必然的に書き飛ばした終盤のER部分を中心に直します。スピード感を上げるために言葉を削りながらも、わかりやすくすることを目標に。「お前の願いを三つ聞いてやる」はこの段階で思いつきました。これを思い付けたことでおそらくは充足できたろうと判断し、脱稿。

_これはわりと「なにを書きたいか」が最後まで一貫されたケースでした。いつもはもっとグズグズです。私のストーリーの書き方は、なにを書きたいかを書きながら(書くという作業・儀式を通じて)探していく、というスタイルを取ることがほとんどです。

それから、上記の説明(?)ではだいたい興味が書きのテクニック方向に向いているかと思います。こういうふうに興味が向くのは、私が最終的な文章の「美しさ」にわりあい重きを置いているからでしょう。これは、SSや小説というよりは、詩文を書くときに近い態度でしょうね。

以上、どなたかの参考になるかどうかはわかりませんが、まあいつものように露悪をしておくか、ということで。

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