(no title)
Aprilfoolさんのところから、Winny刑事事件の問題解決のために 教唆的幇助意思の理論 を読んで少考。
- 「刀ってのは人を切るためのものだ」と主張して憚らない刀鍛治が打った人切り用の刀で誰かが人を切り殺した。果たして、この刀鍛治は殺人幇助に当るのか?
- Winnyの問題というのは基本的にこの喩えと類似した問題だろう。ただ、その成果物のもたらす「犯罪」の主体集団や結果がハンパでなく大きいというだけで。
- 現行法の規定に反するような行動についての議論・言及をすること自体は犯罪ではないはずだ。これを周囲に喧伝したとしても、それを犯罪と認定する法律は著作権法ではなく破壊活動防止法等であるべきだろう。
- その思想を体現するかもしれない道具を作成することも犯罪ではない。なんらかの法律で禁止されていない限りは(爆発物や毒物はこれに相当する)。そして少なくともWinnyは、現行法で作成を禁止されている道具ではない。
- 警察やら著作財産権者からすればP2Pファイル共有システムの存在自体が一種のテロであろう。当然そのテロの主犯はP2Pファイル共有システムの製作者だ。だが、このテロについて製作者の罪を正しく問う方法は現行法の下では存在しない。そこで彼らはこのテロをいかに潰すかと考えた結果、「著作権法違反幇助」という理屈を持ちだしてきた。
- この現状に対し、「厳密には違法でない実行を伴ってしまった思想犯を犯罪者とするための方法」が確立しようとしている、と考えるのは穿ちすぎだろうか?
- 本来行われるべきは正しいイデオロギー闘争、デジタルデータと流通革命と著作権を巡る包括的な見直しの議論であるべきだろう。
- しかし本件では、既存市場維持のための活動(本来ならば市場で、せめて立法の場で行われるべき戦いだ)が、司法の場で行われているのではないか、という疑問を感じる。
- 確かにWinnyというテロはなんらかの形で裁かれるべきであろう。しかし、本件は単なる司法の枠で扱い切るにはあまりに危険な多くの問題に波及する要素を含んでいる。
- ぶっちゃけ今後100年の国策に影響出る話なんだから、大岡裁きでもやってほしいってなもんである。もちろん法治国家というものはそんな「横暴」がまかり通る国であるはずはないのだが、しかし本件にまつわるある種の「横暴」が国を滅ぼしかねない決定を導いてしまう可能性はありえないとは言い切れまい。
ynakata : 自己フォロー:「ハンパでなく大きいだけ」とは言っているが、実際にはそのスケールが問題となっていることには留意せよ。/ 司法制度がある種の闘争の道具と化している状況は、ゲーム理論的にあんまりよろしくないんじゃないかと思うわけだ(最終的な最大化でなく、目先の最大化が行われてしまう危険があるような気がする)。