ふりーとーくのTips:

遥かなる波濤の呼び声

『四獣伝説 遥かなる波濤(なみ)の呼び声』著者:五代ゆう
上中下3巻構成、ISBNコード未調査(^^;、富士見ファンタジア文庫刊

(例によってファイルの英名はテキトーに決めただけ。有識者その他からのクレームがあれば変更致します)

富士見のファンタジア小説大賞の大賞受賞作家、五代ゆうによる第3長編。 大航海時代カリブを匂わせる異世界にて、女船長とその仲間たちが繰り広げるケレン味たっぷりの海洋冒険ファンタジー。というあたりがおおまかな紹介か。 五代氏の作品はどれもこれもファンタジア文庫中ではオススメできる質の高いものだが、これもご多分に漏れずオススメできる。

オススメできる、のだが私には、ちょっと読後に不満が募ってしまった。

いい小説だし、好きな小説だと思う。だから、こういうこと書くのは心苦しい。けど、前2作(はじまりの骨の物語、機械じかけの神々)に、「海洋冒険」という皮をまとわせただけじゃないのか?と思ってしまったぐらい、前2作と似ている。というか、「全部同じ話だね」で切って捨てられても仕方ないのでは、などとも思う。

前2作を知らないのなら存分に楽しめるだろう。けれど、知っているとそれがアダになるかもしれない。筆力やらシーンやらの完成度が高いぶん、同じストーリーコンセプトの使い回しが気になってしまう。「その話はもう前の作品で理解したんだ、違う話見せろ」と思ってしまう。

とはいえ、そんな苦言が出てしまうのは私が過大な期待を抱いていたせいだ。「はじまりの骨の物語」で骨太のファンタジーをジュブナイル/ヤングアダルトの土俵でやれることを示し、「機械じかけの神々」では同様のコンセプトで描き切り、と(私は勝手に)思っていた次の話、いくらか気負いながら読んでしまったのであろうて。読めば価格以上のものが取り戻せるだろうし、いいモノを読んだという読後感だってある。

なんとなく不満だった理由はたぶんもう一つ。私の海洋冒険への思い入れが強すぎってあたり。というか、ジュブナイルな海洋冒険ものとして、燦然と輝く「One Piece(週刊少年ジャンプ連載)の第1話」を先に読んでしまったのは大きい。ジュブナイルな海洋冒険で、One Pieceの第1話には敵いません。あれ完璧すぎ。この両者を読まされたときにどっちが『海洋冒険もの』として優れてるかって聞かれたらね、私は悩まず即答します。そんなわけで、「もっと海洋冒険して欲しかったぜ」ってのが不満点。

ということで、海洋冒険とストーリーコンセプト、楽しむべき両輪を純粋に楽しめなかった私は「ううむ」とうなってしまったわけである。どっちも単なる一読者のわがままなんだけどね。

さて、念のため言っておくが、『遥かなる波濤の呼び声』は面白い。面白いが、「もっと面白くいていい」という私のないものねだりがこのような苦言として発露しているだけのことである。この文章だけ読んで苦言吐くような愚かモンがおったら、ワシが出向いてって力づくで読ませちゃる。つーても、ワシも借りて読んだもんだから持ってないけど(^^;