『キリンヤガ』 マイク・レズニック著 内田昌之訳 早川文庫SF
ISBN4-15-011272-X
ヨーロッパ人の手により変貌した故郷・ケニアと呼ばれるようになったその地を捨て、キクユ族の末裔たちはテラフォーミングされた小惑星キリンヤガへと移り住んだ。 祈祷師(ムンドゥムグ)コリバは、キユク族の伝統・伝承を頑なに守り、キリンヤガをキユク族の永遠のユートピアとすべく尽力する。しかしそれは文明の力に支えられた、かりそめの隔離された地でしかなく、楽園キリンヤガは様々な形で揺れ動き、コリバは苦悩して行くことになる。
各篇が短編で発表され、全体としてオムニバス長編を構成している。 設定としてはSFであるが、現代社会の持つさまざまな要素を寓話的に取り込み、印象的なエピソードの数々でさまざまな思考を喚起させてくれる物語である。SFということを無視して、万人に読んで欲しい傑作だ。